ハーバード大学ロースクール教授が真面目にそして陽気にスター・ウォーズと法学と行動経済学を用いて世界について語った本
スター・ウォーズによると世界は
キャス・R・サンスティーン 著
山形 浩生 訳(←訳者あとがきが面白い)
スター・ウォーズ:ファン: ファンじゃない:
丸ごとスター・ウォーズ
もう正直スター・ウォーズ満載すぎて、というか真面目な文章の比喩表現までスター・ウォーズなので、
スター・ウォーズ好きが行動経済学に興味を持っているならば最初に読むべき本と言える。
結局のところ、アナキン・スカイウォーカーは処女懐胎の産物だ。人間の父は持たない。キリスト的な人物で、人類の罪のために死ぬ。かれはその罪の化身でありシンボルだ。
もう、スター・ウォーズのストーリーを知っていないと、何がなんやら分からないでしょ。
スター・ウォーズ好きすぎるでしょ
スター・ウォーズの「新たなる希望」がヒットした理由を「有名で時代の流れに合っている作品」だったからと考察した上で、スター・ウォーズそのものについて「実にアメリカ的なストーリーで、その特徴は不明確な未来の中での選択の自由をテーマにしている」と述べている。
スター・ウォーズファンだけあって、逆に冷静な考察ができていると感じる。内容についても法学の歴史的な背景などを真面目に論じている。
しかし、いくらなんでもスター・ウォーズの色が濃すぎる!!!
スター・ウォーズ以外の情報も欲しい
本書を読み終わると、スター・ウォーズファンでもアメリカ人でもない人は消化不良になる。
そこで、面白いと感じるのが訳者あとがきだ。
訳者の山形さんは東京大学の学士、MITの修士をもち、大手調査会社に勤務する傍ら、トマ・ピケティ「21世紀の資本」(共訳)や伊藤城穰一ジェフ・ハウ「9プリンシプルズ」の翻訳や「新教養主義宣言」、「たかがバロウズ本」などの執筆活動も行うすごい人だ。
散々アメリカ的なストーリーのスター・ウォーズ愛を見せられた後に訳者あとがきを読むと、とても落ち着く。
スター・ウォーズへの愛情吐露は当然予想されていた。でもそこはそれ、アメリカを代表する法学者でホワイトハウスの公職にもついた人物としてのプライドというか慎みで、基本はもっと真面目でアカデミックな路線に行くと思っていたのに……。ちなみに、書きぶりもえらくライトだ。
読者の気持ちを実にうまく表現してくれている。
スター・ウォーズコレクション
個人的にスター・ウォーズファンではないのでどちらでも良い。
しかし、ファンであるならば、コレクションの一つとして本書を買うべきだと思う。
そして、内容に強く共感して欲しい。
目次
はじめに:スター・ウォーズから学ぶ
エピソードI:私がお前の父親だ
エピソードII:だれにも好かれなかった映画
エピソードⅢ:成功の秘訣
エピソードⅣ:スター・ウォーズを見る十三の視点
エピソードⅤ:父と息子
エピソードⅥ:選択の自由
エピソードⅦ:反乱軍
エピソードⅧ:憲法的なエピソード
エピソードⅨ:フォースと英雄の旅
エピソードⅩ:我々の神話と我々自身
著者紹介
キャス・R・サンスティーン
1954年アメリカ・マサチューセッツ州生まれ。法学者。1981年からシカゴ大学ロースクールで教鞭をとり、2008年よりハーバード大学ロースクール教授。憲法学、行政法、環境法をおもな専門分野とし、法学に行動経済学的な視点をまじえた研究で知られる。オバマ政権下ではホワイトハウスで情報規制問題局(OIRA)の長を務めた。ノーベル経済学賞を受賞したリチャード・セイラーとの共著でベストセラーとなった『実践行動経済学』をはじめ、『インターネットは民主主義の的か』『熟議が壊れるとき』『賢い組織は「みんな」で決める』(共著)など多数の著書がある。