ツイッターに仕組まれた罠

書評

「私はツイッターを2020年から本格的に使いはじめました。使い方は簡単で、思いついたことをテキストメッセージでツイートする(呟く)だけのシンプルなアプリケーションです。最初はなかなかフォロワーが増えずにもどかしい日々を送っていたのですが、しばらくするとフォロワー数が増えてきて、ツイートするとフォロワーから反応があって楽しんでいるうちに、通知が気になって、隙あらばツイッターの画面を見るようになりました。もうツイッターが楽しくて辞められないかもしれません…」

それただの依存症かもしれません

じつはツイッターだけでなく、Facebook、InstagramといったSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)のほとんどが薬物依存のプロセスを参考にしてユーザーが依存するように設計されているんです。本記事ではツイッターがどのように設計されているのかを行動経済学の観点からお伝えします。

行動経済学というのは経済学や心理学、脳科学などを混ぜ合わせた学問で、かの有名なアルフレッド・ノーベル スウェーデン国立銀行賞の受賞者も輩出しています。アルフレッド・ノーベル スウェーデン国立銀行賞は通称:ノーベル経済学賞と呼ばれていますが、ノーベル財団からではなくスウェーデン国立銀行から賞金が支払われておりノーベルの遺言により設立された賞ではありません。噂によるとノーベル一族から不満が出ているとかなんとか。

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依存症へのステップ

冒頭に書かれているあるユーザー発言は薬物依存のプロセスを踏んでいます。

そのステップとは、

  1. ツイートするだけのシンプルさ=入りやすい
  2. フォロワー数 =目標の設定
  3. フォロワーの反応 =フィードバック
  4. 通知 =依存行動への合図
  5. 隙あらばツイッター =行動嗜癖になる

つまり、薬物依存と同じプロセスでユーザーを依存させる設計になっているのです。そのプロセスを一つずつ説明していきます。

入りやすい

ハマるための第一段階として入りやすさが重要です。ツイッターはアプリケーションをダウンロードして、初期設定をするだけで簡単にはじめられます。あとはテキストメッセージをツイート(呟く)だけ。ツイッター初日であっても何かを呟くだけでフォローされます。
私はツイッター初日で数名にフォローされて、さらに「副業で月収100万円も夢じゃない!」という魅力的な内容のDM(ダイレクトメール)も頂戴しました。その後、丁寧に興味ない旨を返信したのですが、いまだに連絡は途絶えたままです。
この入りやすいというのが依存への入口です。薬物依存の場合は、ドラッグが売っている場所や地域に住んでいて、簡単に手に入ってしまう環境が依存症への第一歩となってしまいます。

目標の設定

「Twitterをはじめて1ヶ月で1000人のフォロワーの皆さんと繋がれました!次は1500人を目指します!!!」という目標が日々呟かれていますが、数字の目標に依存しているだけかもしれません。この目標を設定することもSNSにハマる条件です。いいねの数、フォロワーの数など数字を見せることで脅迫概念的な目標追求を後押ししていき、最初はツイッター楽しいと感じていたユーザーもいつしかフォロワーを増やすことが目標になります。やがてツイッターをしている目的を失っても、自分の投資した時間がもったいなくてツイッターを辞められなくなるのです。この投資した時間を行動経済学でサンクコストと言います。

サンクコストを翻訳すると、埋没(サンク)してしまってもう取り返せない費用と(コスト)いう意味です。 例えば「超音速旅客機コンコルドの商業的失敗のように、投資して損失が膨らみつづけているけれどもそれまでの投資を惜しみ、投資がやめられない状態」この状態をコンコルド効果と呼び、その費用をサンクコストと呼びます。

フィードバックがもらえる

ツイッターは投稿すれば、タイムラインと呼ばれる記事一覧に自分のツイートが流れていきます。そして即座に「いいね」、「リプ(返信)」、「リツイート」などのフィードバックを他のユーザーからもらえます。このフィードバックがいつそしてどのくらいもらえるのかわからない予測不能な状態が依存の一要因です。

1971年のマイケル・ゼイラー氏の鳩と餌を使った実験によると100%の確率より50~70%の確率で餌がもらえる選択肢を好み、さらに脳の快楽物質であるドーパミンの量も多いことがわかりました。このギャンブル的な不確実性のフィードバックによってさらにツイッターに依存してしまうのです。

依存行動への合図がある

ツイッターアイコンの右上にいるあの赤色の通知ですが、ユーザーが「気になる!」という印象をつけるためにわざわざ危険、緊張、怒り、などのイメージを与える赤色をしています。あれは「いいねされたよ」とか「DM来てるかもよ」とか「フォロワー増えたかな」などの気になる刺激を与えてツイッターを開かせようとする合図になっているんです。この合図が与えられると依存行動の衝動に駆られてツイッターにさらに依存してしまいます。

行動嗜癖になる

「自分で望んでおらず不利な結果をもたらすとしても、脅迫的に行動してしまう癖」のことを行動嗜癖(こうどうしへき)と呼びます。例えば、ツイッターの通知を切っているにも関わらず携帯を何度も確認してしまうという行為です。ミシガン大学のケント・べリッジという神経科学者の2008年の薬物依存に関する論文によると「好きであるということ(liking)」と「欲しい(wanting)」は別物であると述べられています。

ツイッターの場合で言うならば

「好き」:ツイッター楽しいな。
「欲しい」:いいね欲しい。フォロワー欲しい。インフルエンサーになりたい。

欲しい衝動に駆られてツイッターしている人は依存症と言えるでしょう。
ちなみに家で子供がゲームをやっていたので確認してみたところ、「ゲームの楽しさは普通だけど、もっと良いアイテムが欲しい」と論文と一致した行動していました。

依存からの脱却

依存症から脱却する方法は「環境を変える」もしくは「代替する」の2つの選択肢があります。
「環境を変える」はツイッターのアプリとアカウントを削除して、携帯の機種を変えて、引越しするなど生活環境を変えましょう。これは依存のプロセスである6つを全てから離れることができるので再度ツイッター環境を整えない限りツイッター依存症になることはないでしょう。
「代替えする」はツイッターの代わりになるアプリを見つけてツイッター依存の程度を減らす。もしくはツイッターをbotなどに任せて自分の負担を減らしましょう。そうすることで多少ツイッター依存が和らぐ可能性があります。

最初はもっとふざけた文章を書こうと考えていたのですが、真面目な文章になってしまいました。ツイッターに時間を取られてしまっていると感じてる方のヒントになれば幸いです。

参考文献

(※1)本記事の内容のほとんどがは’僕らはそれに抵抗できない 「依存症ビジネス」のつくられかた’を参考に丸パクリ書かせていただきました。本記事の100倍くらいの情報が詰まっていますので、依存症についてより深く知りたい方は以下リンクよりお買い求めください。

(※2)薬物依存に関しての論文も参考にして本記事を書いております。薬物依存に関して詳しい内容を知りたい場合はこちらの論文をご参照ください。(英文です)

Robinson TE, Berridge KC. Review. The incentive sensitization theory of addiction: some current issues. Philos Trans R Soc Lond B Biol Sci. 2008;363:3137–3146.(Free Doc.)

(※3)サンクコストについてはこちらの記事もご参照ください

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