人はいかにして他人に影響を与え、他人から影響を受けているのか。
名門大学の認知神経科学者が教える。人の動かし方
ニューヨーク・タイムズ、フォーブスほか、多数のメディアで年間ベストオブ・ブックにノミネート。イギリス心理学会賞受賞。
「なぜ、説得しようとして相手を怒らせてしまうのか?」
「なぜ、あの人の意見ばかりが会議で通ってしまうのか?」
「子供に勉強して欲しいけど、どうしたら自主的に勉強してもらえるのか」
生きている限り、人間関係の悩みは尽きません。
しかも、相手の行動の理由が分からない状態で、対処を求められる場合が多く、出題された問題が分からないのに答えを求められていると言う無理ゲーを人間関係で要求されています。
そんな人が2020年現在読むべき本がこちら
事実はなぜ人の意見を変えられないのか
ターリ・シャーロット著
読みやすさ:文章の長さ: 分かり易さ: おもしろさ: ストーリー: 勉強になる:
コントロールという幻想で不幸になる
人間関係で上手くいかない人は、相手との関係をコントロールしたいという欲求が強いのかもしれない。「コントロール幻想」と呼ばれるバイアスで一切コントロールが利かない事象にたいて、自分が影響を与えることができていると勘違している状態を指す。
そもそも、他人をコントロールしようというのは無理難題で、他人は他人、自分は自分である。(アドラー心理学をご参考ください)
コントロール幻想を抑える手法として、人間の生物的な、そして心理的な動き、つまり行動原理を理解することで安心感を持つことが有効と言える。
本書はそんな欲求が強い方にオススメだ。
あなたは正しい
仕事ができる上司でも、大学教授でも、認知神経科学者でも同じ人間なので生物学的な枠からはみ出て行動することはむずかしい。
平等バイアスがかかると各個人の信頼性や専門技術を無視して、全員の意見を平等に扱うという容易な戦略をとる場合がある。専門家の意見を尊重すべき時に、素人も含めた人気の意見を受け入れてしまうという状態だ。
これは会社の会議においても、自分が1番知っていても、周りの意見に流されてしまう場合があることを示唆している。周囲の人のご機嫌を取るためだったらその行動は問題ないが、もし集団としてよりよい解決法を模索しているならば、「私の意見が正しい」と声を上げよう。その勇気ある行動が将来を決める一歩となる。
素晴らしい本
何冊か行動経済学、心理学系の本を読んできたが、本書が一番面白かった。「行動経済学の逆襲」もかなり面白かったが、それに続けて読むならうってつけの本だと思います。(行動経済学の逆襲の方が発行日が古いので、研究の歴史を追えるのがとても良い)
正直、この本を読まないと人生の半分くらい損しますよ
目次
1 事実で人を説得できるか?(事前の信念)
2 ルナティックな計画を承認させるには?(感情)
3 快楽で動かし、恐怖で凍りつかせる(インセンティブ)
4 権限を与えて人を動かす(主体性)
5 相手が本当に知りたがっていること(好奇心)
6 ストレスは判断にどんな影響を与えるか?(心の状態)
7 赤ちゃんはスマホがお好き(他人 その1)
8 「みんなの意見」は本当にすごい?(他人 その2)
9 影響力の未来
著者紹介
ターリ・シャーロット (Tali Sharot)
ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン教授(認知神経科学)、同大学「アフェクティブ・ブレイン・ラボ」所長。意思決定、感情、影響の研究に関する論文を、ネイチャー、サイエンス、ネイチャー・ニューロサイエンス、サイコロジカル・サイエンスなど多数の学術誌に発表。神経科学者になる前は金融業界で数年間働き、イスラエル空軍で兵役も務めた。現在は、夫と子供たちとともにロンドンとボストンを行き来する生活を送っている。主な著作に『脳は楽観的に考える』(斉藤隆央訳 柏書房)がある。