情報を得ることは現代において簡単になりましたが、情報が多すぎて、情報洪水時代となっています。そんな中、必要なのが『考える』力です。考えると言っても「正解」を求める力ではありません。答えがない問題に対して自分なりの回答を探し出す力です。
そんな時代において、至難書となる一冊が
東大教授が教える 知的に考える練習
東京大学経済学部教授 柳川 範之 著
読みやすさ:お役立ち度: 考える練習:
考える力をつけるには?
受け取った情報を、“頭の中に「網」を張る”事で記憶に残るようにする。
本書では1〜2章で、現代の情報洪水時代と日本人の正しさの基準の呪縛と自分で考える重要について述べた後にインプットの手法を解説しています。著者によるとそれは“頭の中に「網」を張る”と表現しており、興味ある情報をあらかじめ意識しておいて、その情報が来たら記憶に残るようします。
3章ではその引っかかった情報の調理方法を具体的に説明しています。
- 抽象化する
- 一言で表現する
- 共通点、相違点を考える
1. 抽象化する
例えば、りんごが落ちた → 物が落ちる → 地面が物を引っ張っている → 地球が引っ張っている → 重力がある → 万有引力の法則
抽象化するとは、この様に情報を一般化や抽象化することで、その情報の構造が一般的な事柄に当てはまるかどうかを考える方法です。
2. 一言で表現する
たくさんの情報が頭の中にある状態で、それを人に伝えようとする場合に一言で表現できるように考えます。今風に表現するならYoutubeのサムネイルに近い物になります。
実は文章や動画、本などはタイトルで売上が変わると言われています。一言で表現するのは考える力の賜物ですね。
3. 共通点、相違点を考える
同種の情報の共通点と相違点を考えることを推奨されています。確かに、テスト勉強の時に同じような参考書10冊読むと、どの参考書にも書かれている内容は重要だから覚えるべきとか言われていますよね。
相違点は意見の違いを見ることで、認知バイアスを取り除き、客観的な視点を考える訓練になります。
4〜5章では情報の手放し方や情報が知性に変貌していく様子など、考える訓練後の話をされています。
教授の方が書かれた本なので、内容が地に足がついている感じがあって、非常に分かりやすかったです。私の文章ではいまいち伝わりづらいと思いますので、是非本書をお手にとってご一読ください。
目次
はじめに
1章 情報洪水時代で変わる「頭の使い方」
2章 頭の中に質の良い情報があつまる「網」を張る
3章 知的に考えるための「調理道具」を揃える
4章 情報は流れてくるまま、流しっぱなしに
5章 頭に残った情報は熟成し、やがて知性に変わる
おわりに
著者紹介
1963年生まれ。東京大学経済学部教授。中学卒業後、父親の海外転勤にともないブラジルへ。ブラジルでは高校に行かずに独学生活を送る。大検を受け慶応義塾大学経済学部通信教育課程へ入学。大学時代はシンガポールで通信教育を受けながら独学生活を続ける。大学を卒業後、東京大学大学院経済学研究科博士課程修了。経済学博士(東京大学)。
現在は契約理論や金融関連の研究を行なうかたわ、自身の体験をもとに、おもに若い人たちに向けて学問の面白さを伝えている。著書に『法と企業行動の経済分析』(第50回日経・経済図書文化賞受賞、日本経済新聞社)、『契約と組織の経済学』(東洋経済新報社)、『東大教授が教える独学勉強法』(草思社)など。