部屋は出来るだけモノを少なくして快適な空間とするのが理想だと思います。そんな空間をつくるための世界一簡単な方法をご紹介します。あなたの生活のお役に立てたら幸いです。
世界一簡単な方法
持ち物の8割を捨てましょう
まとめ
意外に簡単な解決法と思われたのではないでしょうか?でも本当なんです。部屋からモノがなくなれば、整理整頓なんて意識しないですみますし、むしろモノを買い足さなくてはいけない状態かもしれません。
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「ん?何が簡単だ!もっと現実的な話を書け!!!」と思われそうなので、もう少し説明します。
じつは私自身、2ヶ月前までモノで溢れた”汚い部屋”に住んでいましたが、2020年3月に引越し準備をしていた時に「引越しついでに部屋を快適な空間にしてみたい。」という天才的アイデアを思いついてしまいました。現在は必要最小限のモノに囲まれて快適に暮らしています。
あなたのせいじゃない
本記事で伝えた重要なことは「モノが捨てられない理由は、あなたの生い立ちや性格や好きな食べ物が原因ではなく、客観的にモノを見れないから」です。その点を行動経済学の研究結果からお伝えできたらと思います。
行動経済学というのは簡単に説明すると経済学や心理学、脳科学などを混ぜ合わせた学問です。かの有名なアルフレッド・ノーベルスウェーデン国立銀行賞の受賞者も輩出しています。アルフレッド・ノーベルスウェーデン国立銀行賞は通称:ノーベル経済学賞と呼ばれていますが、ノーベル財団からではなくスウェーデン国立銀行から賞金が支払われておりノーベルの遺言により設立された賞ではありません。噂によるとノーベル一族から不満が出ているとかなんとか。
そんなこんなでモノを捨てる時の行動経済学の考え方をご紹介していきます。
もったいない
モノを捨てようとすると「もったいない」という心の声が聞こえてくる人も多いと思います。2004年にノーベル平和賞を受賞したケニア出身の環境保護活動家のワンガリ・マータイさんがMOTTAINAIキャンペーンをしていましたが、そのワンガリさんの“もったいない“より、あなたの「もったいない」はもう少し金銭的な心の声だと思います。ちなみにノーベル平和賞は通称ではなくノーベル平和賞が正式名称であり、アルフレッド・ノーベルの遺言によって創設されているのでノーベル一族から苦情は出ていないらしいです。
「もったいない」は経済学用語でサンクコストと言い換えることができます。サンクコストを翻訳すると、埋没(サンク)してしまってもう取り返せない費用と(コスト)いう意味です。 例えば「超音速旅客機コンコルドの商業的失敗のように、投資して損失が膨らみつづけているけれどもそれまでの投資を惜しみ、投資がやめられない状態」この状態をコンコルド効果と呼び、その費用をサンクコストと呼びます。(※1)
家の中のモノを捨てる場合でも「値段が高かったから服が捨てられない。」や「趣味のロードバイクはいつか乗るだろう。高かったし…」などサンクコストを気にして行動に移せないことが多々あります。しかし、単なる心理的な効果なので、客観的な視点を持つことができれば簡単にモノを手放すことができます。
損をしたくない
もう一つ「もったいない」の他に「損をしたくない」という人間の心理があります。これは、モノを捨てたあとに“損“をすることで精神的な苦痛を感じるのを恐れる心理です。
行動経済学でその心理を「価値関数」というグラフで表すことができます。このグラフによると人間は変化に敏感に反応しますが同じ状態が続くと反応が鈍くなります。
さらに、継続的な利益に対する反応は続くほど鈍感になりがちですが、損が続くと利益より敏感に反応してしまいます。(価値関数のグラフの表現は本記事に合わせてわかりやすく表現してあるので正確ではありません。詳しくはリンクから本をご購入して内容をご確認ください。)(※1)

例えば
(1)あなたは会社から一時金の10万円をもらいました。
(2)しかし、その10万円の入った封筒をどこかで落としてしまいました。
この2つの出来事に対して、人間の反応は異なります。10万円がもらえた時は「ラッキー10万円の臨時収入だ!何買おうかな〜?」の程度の喜びですが、10万円を落とした時はこの世の終わりと言わんばかりの後悔を感じて何もかもが嫌になってしまう人が多いと思います。つまり、価値関数の通り、得した時の喜びより損した時の後悔の方に敏感に反応してしまうのです。
このように「もったいない」とか「損したくない」とかは人間の心理なだけなのです。そんな論理的でない思考に影響されてモノが捨てられないと言っているのは、「彼女のことは好きだけど、今は告白できない」と言っているビビリ野郎と一緒です。男なら当たって砕けろ!甘い!甘すぎる!!それは埼玉県の敵国である千葉県の自販機で大量に見かけるMAX Coffeeのように甘い!!!そんな仲の悪い埼玉県と千葉県の歴史についてはAmazonプライムで「翔んで埼玉」という映画で学べます。(Amazon Primeビデオも観れるAmazon Primeniに以下リンクからご入会ください。)
情報はいらない
どれだけ心理効果であると認識出来たとしても、客観的な視点でモノを見れないと捨てることが難しいと思います。そこで本章では人間の感覚は当てにならないという研究をご紹介して、客観的に見るための方法をお伝えします。
2008年に2つの実験が行われました。
(1)ワインの値段と味の相関を調べるために、ワインの値段を伏せた状態で、一般消費者だけでなくソムリエなどの専門家も含めた500人以上の被験者に6000回ブラインドテイスティングを行いました。もし相関があるならば高いワインに対して美味しいという評価が集まるはずですが、高くても安くても美味しさの評価は一緒だったという結果でした。(※2)
(2)また別の実験で、嘘のワインの値段を伝えた上で美味しさを評価してもらいました。その結果、被験者たちは高い値段と聞かされたワインを美味しいと評価しました。この実験では被験者のアンケート結果だけでなくfMRIの観測をしていて、脳の中で値段の高いワインに対して喜びを感じていることを確認しています。(fMRIについては説明が難しいのでWikipediaをご参照ください。)(※3)
つまり、美味しいワインを飲ませたいなら味の話をするより値段の話をした方が美味しく感じてもらえるということです。言い換えると人間の認識はそのモノ自体に由来するのではなく情報に左右されてしまうということです。
モノを捨てる時にも思い出や値段といった情報で評価しており、本来持ちあわせている実用性や利便性を評価をしているわけではありません。この問題を解決するためにはモノに情報持たせないようにします。例えば、捨てようとしているモノを100均で購入した商品だと思い込んで、購入時の値段の情報を脳内で置き換えます。それによりそのモノが持つ本来の必要性にのみ集中して意外に冷静な判断で取捨選択できるようになります。アホっぽい方法に聞こえますが、リフレーミングという心理学的な方法です。(詳細についてはググってください)
おわりに
行動経済学と個人的な見解をふんだんに盛り込んで、8割のモノの捨てるという、こんまりもビックリの部屋を快適に整える世界一簡単な方法をお伝えしましたが、部屋が快適なのは人それぞれなので、8割のモノを捨てなくてもいいと思います。むしろ、部屋が何かに埋まっていないと恐怖を感じるなんて人もいるので、個人の範囲で快適な部屋を目指してください。グッドラック!
参考文献
(※1)価値関数とサンクコストについては以下の本をご参考いただきたい。行動経済学の歴史的発見をわかりやすく説明している本で527ページと長いですが意外に読めます。
行動経済学の逆襲
リチャード・セイラー 著
遠藤 真美 訳
(※2)Goldstein, R., Almenberg, J., Dreber, A., Emerson, J. W., Herschkowitsch, A., & Katz, J.(2008). Do more expensive wines taste better? Evidence from a large sample of blind tastings. Journal of Wine Economics, 3(1), 1-9. (PDF)
(※3)Plassmann, H., O’Doherty, J., Shiv, B., & Rangel, A. (2008). Marketing actions can modulate neural representations of experienced pleasantness. Proceedings of the National Academy of Sciences, 105(3), 1050-1054. (PDF)
(※2)と(※3)の内容の一部はWiredにて日本語訳で紹介もされています。(記事)